茨木市総持寺の整形外科・リウマチ・骨粗しょう症・リハビリ・ペインクリニック・スポーツ整形外科

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COLUMNコラム

2026.10.22

骨折を1日でも早く治すために ― 標準治療から最新治療まで、エビデンスで解説します

骨折を1日でも早く治すために ― 標準治療から最新治療まで、エビデンスで解説します

「仕事に早く戻りたい」「試合に間に合わせたい」「ギプス生活を少しでも短くしたい」――骨折をされた患者さんから、毎日のようにこうしたご相談をいただきます。

このコラムでは、骨折の治りを早めるために今わかっていること(科学的根拠=エビデンス)を、できるだけわかりやすくご紹介します。あわせて、保険診療でできることと自費診療になるものを分けて説明します。

最初にお伝えしたいこと 骨折を早く治すうえで最も大切なのは、「特別な治療」よりも正しい位置で骨を合わせ(整復)、しっかり安定させる(固定)ことです。新しい治療法は、この土台があってはじめて効果を発揮する「上乗せ」の治療です。

骨はどうやって治るの?

骨折した骨は、おおまかに次の順番で治っていきます。

炎症期(数日〜1週)

骨折部に血のかたまりができ、修復に必要な細胞が集まる

仮骨(かこつ)形成期(数週〜2か月)

やわらかい骨(仮骨)が骨折部をつなぐ

リモデリング期(数か月〜1年以上)

仮骨が硬く丈夫な骨に置き換わる

治るまでの期間は、指の骨なら3〜4週、手首(橈骨遠位端)で6〜8週、すね(脛骨)では3〜6か月程度が目安ですが、年齢・部位・骨折の型・持病・生活習慣で大きく変わります。

治りを遅らせる主な要因

固定が不十分(骨折部がグラグラ動く)、喫煙、糖尿病、骨粗鬆症、低栄養、ビタミンD不足、高齢、ステロイドなど一部の薬、骨折部の血流が悪い部位(舟状骨、脛骨など)。

【保険診療】基本となる治療

シーネ固定・ギプス固定(保存療法)

シーネ(副木)ギプス材などで作った添え木を包帯で固定します。腫れが強い受傷直後は、締め付けすぎを防ぐためシーネから始めることが多いです。
ギプス(キャスト)全周を固めて強固に固定します。ずれ(転位)が少ない骨折の多くはこれで十分に治ります。基本的には隣接関節まで固定することが必要です(例えば橈骨遠位端骨折では肘関節と手関節まで固定が必要です)。
機能的装具骨折の種類によっては、早い時期から関節を動かせる装具に切り替えることで、筋力低下や関節の硬さ(拘縮)を防ぎ、結果的に社会復帰が早まります。

早く治すポイント

「固定をきちんと守る」ことが最短ルートです。自己判断でシーネを外したり、痛いのに無理に体重をかけたりすると、骨がずれたり治りが遅れたりして、骨癒合に時間がかかり、かえって遠回りになります。また、いくらしっかり固定していても荷重や衝撃を加えてしまうと、骨折部がずれてしまいます。特に下肢の骨折では松葉杖などをついて体重をかけないでしっかり免荷することが重要です。

手術(骨接合術)

プレート・スクリュー・髄内釘などで骨を内側から固定します。

リハビリテーション

固定中から、固定していない関節を動かす・筋力を保つ運動を行います。骨への適度な負荷は骨の修復を促すことがわかっており、医師の許可の範囲で早期に荷重・運動を始めることが、回復を早めることにつながります。

【保険適用の条件あり】骨の治りを後押しする治療

LIPUS(低出力超音波パルス療法)

1日20分、骨折部に弱い超音波を当てる治療です。痛みや熱はほとんどなく、器械をレンタルし、ご自宅で装置を使って行います。また、当院では物療として外来治療を受けていただくことが可能です。うまくいけば骨融合までの期間として1/3程度の期間短縮が可能です。基本的には毎日照射が必要であり、週に1回程度ではほとんど効果が期待できません。

エビデンス

・すねの骨折(保存治療)で、治癒までの期間が約38%短縮(Heckman ら, J Bone Joint Surg Am, 1994)
・手首の骨折で、治癒期間が約98日→61日に短縮(Kristiansen ら, J Bone Joint Surg Am, 1997)
・一方、すねの骨折を手術(髄内釘)した患者さん約500人を対象とした大規模試験では、骨癒合・機能回復ともに明らかな差はなかったと報告されています(TRUST試験:Busse ら, BMJ, 2016)。
・偽関節・遷延治癒(なかなかくっつかない骨折)では、癒合率を高める報告が多数あります。

「すべての骨折に効く」とはいえませんが、条件が合えば有力な選択肢です。超音波なので、照射部位が深ければ超音波のパワーが減衰してしまいます。皮膚から近い部位の骨折が良い適応です。

保険適用

すべての骨折が保険適応になるわけではありません。基本的には手術しない限りは新鮮骨折に保険適応はありません。整形外科クリニックの中には外来で照射可能なところもあり、ホームページなどで確認してください。

難治性骨折に対する電磁波・電気刺激療法

骨折部に微弱な電気や電磁場を与えて骨の形成を促す治療です。偽関節・遷延治癒に対して保険適用があり、一定の有効性が報告されています。新鮮骨折を早めるエビデンスは限定的です。

PTH製剤(副甲状腺ホルモン製剤:テリパラチドなど)

骨を「つくる」働きを高める注射薬で、骨代謝(リモデリング)を高めることにより、骨癒合を促進させます。本来は重い骨粗鬆症の治療薬ですので、骨折に保険適応はありません。

エビデンス

・閉経後女性の手首の骨折で、治癒期間が約9.1週→約7.4週に短縮(Aspenberg ら, J Bone Miner Res, 2010)
・高齢者の骨盤骨折で、治癒期間が約12週→約8週に短縮し、痛みや歩行能力も改善(Peichl ら, J Bone Joint Surg Am, 2011)
・複数の研究をまとめた解析でも、骨癒合を早める傾向が示されています。ただし大規模な試験はまだ少ないのが現状です。

保険適用

注意点:注射が毎日または週1〜2回必要(自己注射を含む)であり、血圧低下・吐き気・めまいなどの副作用、使用できる期間に上限(2年間)がある、などがあります。

高齢の方の骨折(背骨・脚の付け根・手首など)は、骨粗鬆症が隠れていることが非常に多いです。骨密度検査を受け、骨粗鬆症治療を始めることが、今回の骨折の治療と「次の骨折」の予防の両方につながります。

【自費診療】保険適用外の治療

体外衝撃波治療(ESWT)

体の外から強い圧力の波(衝撃波)を当て、骨折部の血流や骨をつくる細胞を活性化させる治療です。

エビデンス

・長管骨の偽関節に対して、手術と同程度の癒合率(約70〜75%)が得られたとの報告があります(Cacchio ら, J Bone Joint Surg Am, 2009)。
・主に偽関節・遷延治癒での報告が中心で、新鮮骨折を早く治すというエビデンスはまだ不十分です。

保険適用

日本での保険適用は「難治性足底腱膜炎」に限られるため、骨折に対しては自費診療となります。 注意点:照射中の痛み、皮下出血など。骨折部の状態(骨の隙間が大きい等)によっては効果が期待できません。

再生医療(PRP療法・幹細胞治療など)

PRP(多血小板血漿)療法

ご自身の血液から成長因子を多く含む成分を取り出し、患部に注射します。腱や靱帯・関節の分野では広く行われていますが、骨折の治癒促進については研究結果がまちまちで、効果は確立していません。ESWTと併用することによってさらに骨癒合を促進するという報告もあります。

幹細胞治療・骨髄濃縮液(BMAC)

偽関節や骨欠損に対して研究が進められている段階で、多くは臨床研究・治験レベルです。
再生医療は「再生医療等安全性確保法」に基づき、国に計画を届け出た医療機関のみが提供できます。

保険適用

原則自費診療です。 実際のエビデンスに関してはもう少し症例の蓄積が必要と考えます。

注意点:採血・注射部位の痛みや腫れ、感染のリスクなど。費用や期待できる効果について、十分に説明を受けたうえでご検討ください。

新鮮骨折に対するLIPUS

前述のとおり、手術をしていない新鮮骨折にLIPUSを使う場合は自費となります。スポーツ選手など、少しでも早い復帰を目指す方が選択されることがあります。一方で整形外科クリニックでは外来治療として行なっていることが多いのでホームページ等で確認してください。

【今日から自分でできること】費用ゼロの「治りを早める習慣」

実は、ここがいちばん効果の大きい部分かもしれません。

項目ポイント根拠
禁煙喫煙者は骨がくっつかない(偽関節)リスクが約2倍。治療中だけでも禁煙を複数のメタ解析で一貫した結果
たんぱく質肉・魚・卵・大豆・乳製品を毎食。高齢者は特に不足しがち栄養状態の改善で回復が良くなる報告
カルシウム・ビタミンD乳製品、小魚、きのこ、鮭など。適度な日光浴も欠乏は骨癒合遅延と関連
ビタミンK納豆、緑黄色野菜骨の形成に関与
お酒は控えめに過度の飲酒は骨の形成を妨げます―
血糖コントロール糖尿病の方は治りが遅れやすい。主治医と連携を高血糖は骨癒合遅延・感染のリスク
固定と安静のルールを守る骨折部が動くと治りが遅れます―
許可された範囲でしっかり動く固定していない関節の運動、指示どおりの荷重適度な負荷は骨の修復を促進
睡眠をしっかり修復は休んでいる間に進みます―

痛み止めについて

ロキソプロフェンなどの消炎鎮痛薬(NSAIDs)が骨の治りを遅らせる可能性が指摘されていますが、短期間・通常量の使用での影響は小さいと考えられています。痛みを我慢しすぎず、処方どおりにお使いください。気になる方は医師にご相談ください。

治療法の一覧(まとめ)

治療保険/自費治癒を早める根拠主な対象当院での治療
シーネ・ギプス・装具保険◎(標準治療)ほぼすべての骨折可能
手術(骨接合術)保険◎(早期の運動・復帰)不安定・ずれの大きい骨折手術できる病院を 紹介します
リハビリ保険○(身体機能回復)すべての骨折可能
LIPUS(手術後・難治性骨折)保険○〜△(部位や骨折型による)四肢骨折の手術後、偽関節など可能
LIPUS(手術なしの新鮮骨折)自費または外来○〜△(部位や骨折型による)早期復帰を強く希望する方外来で保険内で可能
電磁波電気治療保険(難治性骨折)△偽関節・遷延治癒可能
PTH製剤保険(骨粗鬆症がある場合)○(小〜中規模研究)骨粗鬆症を伴う骨折可能
体外衝撃波自費△(偽関節中心)偽関節・遷延治癒拡散型は保険内可能
PRP・幹細胞などの再生医療自費△(研究段階)主に難治例限定的に可能
禁煙・栄養・生活習慣―◎(リスク低減)すべての方ー

◎:確立した有効性 ○:有効性を示す研究あり △:限定的・研究段階

※ 保険適用の条件は診療報酬改定などで変わることがあります。詳しくは受診時にお問い合わせください。

おわりに

骨折を1日でも早く治すための近道は、

  1. 正確な診断と、適切な整復・固定
  2. 許可された範囲での早期リハビリ
  3. 禁煙・栄養など生活習慣の見直し
  4. 必要に応じた、LIPUS・PTH製剤・体外衝撃波などの「上乗せ治療」

の組み合わせです。

当院では、骨折の状態、年齢、お仕事やスポーツの予定、ご希望をうかがったうえで、保険診療・自費診療を含めた最適な治療プランをご提案します。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

よくあるご質問(Q&A)

ギプスはいつ外せますか?

部位や年齢によって異なりますが、成人の場合、手首で4〜6週、指で3〜4週程度が目安です。レントゲンで骨のつき具合を確認しながら判断します。痛みが消えても骨はまだ弱いことが多いので、自己判断で外さないでください。

手術をしたほうが早く治りますか?

「骨がくっつくまでの期間」が大きく変わるわけではありませんが、手術で強固に固定すると、ギプスなしで早くから関節を動かせるため、仕事やスポーツへの復帰が早まることがあります。一方で手術には感染などのリスクもあるため、骨折の状態やご希望をふまえて一緒に決めていきます。

LIPUSは誰でも保険で使えますか?

保険が使えるのは、主に「手足の骨折で手術を受けた方」と「なかなかくっつかない骨折(偽関節・遷延治癒)の方」です。ギプス治療中の新鮮骨折は、原則として自費になります。

骨粗鬆症ではないのですが、PTH製剤(骨をつくる注射)を使えますか?

日本では、骨粗鬆症のない方の骨折治療目的での使用は承認されていません(保険適用外)。高齢の方や骨が弱いと言われたことがある方は、まず骨密度検査をおすすめします。

体外衝撃波や再生医療を受ければ、すぐに治りますか?

残念ながら「すぐ治る」治療ではありません。体外衝撃波は主になかなかくっつかない骨折での効果が報告されており、再生医療は骨折に関してはまだ研究段階の部分が多い治療です。効果・リスク・費用について十分ご説明したうえで、適応がある場合にご提案します。

カルシウムのサプリメントを飲めば早く治りますか?

不足している方が補うことには意味がありますが、たくさん飲めば早く治るわけではありません。たんぱく質・ビタミンDを含めたバランスのよい食事が基本です。ビタミンDが不足している方には、検査のうえでお薬をご提案することもあります。

痛み止めを飲むと骨の治りが遅くなると聞きました。

一部の痛み止め(NSAIDs)で可能性が指摘されていますが、短期間・通常量の使用であれば大きな影響はないと考えられています。痛みを我慢するとリハビリが進まず、かえって回復が遅れることもあります。心配な方は、お薬の種類を調整しますのでご相談ください。

なかなか治らない場合はどうなりますか?

3〜6か月以上たっても骨がつかない場合は「遷延治癒」や「偽関節」と呼ばれます。LIPUSや電気刺激(保険適用)、体外衝撃波(自費)、骨移植を含む再手術などの選択肢があります。原因(固定の不足、感染、血流、栄養、喫煙など)を調べたうえで、最適な方法をご提案します。

この記事を書いた人

中谷 宏幸
整形外科医、リウマチ医

整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医。大阪大学医学部整形外科教室に入局リウマチグループに所属して、リウマチ医、下肢人工関節、足の外科医として基幹病院での勤務医を経て2022年なごみ整形外科リウマチクリニックを開業

専門分野

リウマチ性疾患の薬物治療、関節疾患(特に下肢関節)ペインクリニック(エコーガイド下ブロック・ハイドロリリース)、骨粗しょう症治療、足・膝・股関節、小児整形、リハビリテーション

受賞歴

日本リウマチ学会奨励賞
ISTU(国際超音波治療学会)Young investigator`s awardなど

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