茨木市総持寺の整形外科・リウマチ・骨粗しょう症・リハビリ・ペインクリニック・スポーツ整形外科

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COLUMNコラム

2023.09.12

本当は怖い腰痛:危険な腰痛を見つけて早く受診しましょう

「腰痛」とは症状の名前であって、疾患名ではありません。全年齢を通じて最も経験する人が多い症状のひとつですが、少し痛く度にすぐに病院にかかる人は少ないと思います。
残念ながらどうせ治らないと諦めてしまっている方もいるかもしれません。症状として腰痛が現れる疾患は数多くありますが、そのうち70-80%はレントゲン写真やMRIを撮っても原因がわからない腰痛で「非特異的腰痛」と呼ばれます。
その非特異的腰痛のうち約5%は、見逃してはいけない重篤な疾患が隠されていると言われています。 それでは、どのようなサインが現れたときに、私たちは危険な腰痛を疑う必要があるのでしょうか?

2019年に日本整形外科学会と日本腰痛学会が定めた、腰痛診療ガイドラインを参照して腰痛のレッドフラッグを示し、その症状があるときに鑑別すべき疾患を示します。

腰痛のレッドフラッグ

  1. 発症年齢が20歳未満
  2. 時間や活動性に関係のない腰痛
  3. 胸部痛
  4. 下肢神経症状や膀胱直腸障害
  5. 癌の既往
  6. ステロイド治療、関節リウマチ、糖尿病などの生活習慣病
  7. HIVの感染、化学療法、免疫抑制剤治療の既往
  8. 栄養不良、体重減少
  9. 広範囲に及ぶ神経症状・構築性脊柱変形(円背など)
  10. 発熱を伴う腰痛
  11. 安静によって増悪し、運動で軽快する腰痛

1.発症年齢が20歳未満

大人と異なり幼少期は変性や骨折などは一般的には否定されるので、長期間続く腰痛は注意が必要です。幼少時の先天性疾患、特に学童期での腰痛は特発性側弯症分離症に注意が必要です。また、頻度はまれですが、炎症性腰痛の可能性もあり注意が必要です。

2.時間や活動性に関係のない腰痛

時間や活動に関係のない腰痛は内臓疾患による痛みを考慮しなくてはなりません。内臓疾患は整形外科の専門外になりますが、よく相談に来られます。消化器なら消化器の症状が先行する場合が多いですが、無症状の場合もあります。通常筋骨格の障害による腰痛は体動時に悪化し安静によって軽快しますが、内臓疾患の場合は肢位や体勢に関係なく痛いのが特徴です。

3.

大動脈解離大動脈瘤といった大動脈疾患は急激に症状が悪化することがあるので注意すべき疾患です。 大動脈解離は、大動脈の血管壁が裂けて、その亀裂に血液が入りこむことで大動脈から分岐した動脈の枝の血流が途絶え、脳梗塞、心筋梗塞、消化管虚血がおこり危険な状態となります。この初期症状として突然の腰痛や背部痛、胸痛が現れます。治療としては緊急的に手術がおこなわれ、解離の原因となった血管の内膜の亀裂を取り除くか、閉鎖する手術法が選択されます。 大動脈瘤の多くは破裂しない限り無症状でが、大きくなると胸部大動脈瘤では胸痛・背部痛、腹部大動脈瘤では腹痛、腰痛、背部痛が現れます。この段階で破裂の危険性が高まっており、破裂すると死亡率が80~90%にも及ぶ非常に怖い疾患です。
治療の原則は、破裂をさせないように高血圧の場合は血圧を正常にする等が挙げられます。
動脈瘤の大きさが、腹部では5cm以上、胸部では5~6cm以上、末梢血管では3~4cm以上であれば破裂の危険性は少なからずあるため手術が勧められます。破裂する危険性がある場合に、動脈瘤を人工血管にて置き換える手術がおこなわれます。

4.下肢神経症状や膀胱直腸障害

下肢の強い痛み、筋力低下、尿失禁や便失禁、排尿排便困難(膀胱直腸障害)などの重篤な神経症状が出現した場合は腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症脊椎・脊髄腫瘍遅発性脊椎圧迫骨折などを考慮する必要があります。筋力低下や膀胱直腸障害を放置しておくと元の状態に回復しなくなる可能性があるので早急な精査と治療が必要です。脊髄腫瘍とは、脊髄内や神経を保護する膜である硬膜、クモ膜、神経鞘、さらに脊柱管内の軟部組織や椎体に発生した腫瘍により、脊髄や神経根が圧迫される疾患の総称です。激しい腰痛に加え、しびれ、感覚障害、筋力低下などが生じます。治療としては、腫瘍を取り除く手術がおこなわれます。

5.癌の既往

癌の既往のある方は転移性脊椎腫瘍に注意が必要です。脊椎腫瘍は大きく二つのタイプに分けられます。
一つは原発性脊椎腫瘍と言われ、脊椎から発生する腫瘍です。原発性脊椎腫瘍はまれですが、種類も悪性から良性のものまでさまざまで、後発年齢はなく、若年者から高齢者まで幅広くみられる腫瘍です。 もう一つは転移性脊椎腫瘍と言われ、背骨以外にできた悪性腫瘍、つまり癌が血液やリンパによって背骨に運ばれ、転移した腫瘍です。患者数が多いのは転移性脊椎腫瘍で、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、甲状腺癌、腎臓癌からの転移が多くみられます。癌細胞が脊椎へ転移し、そこで癌細胞が増殖して骨を破壊し、激しい腰痛が現れます。破壊され弱くなった脊椎が負荷を支えられなくなると骨折を生じます(病的骨折)。骨折の骨片や膨らんだ腫瘍によって脊髄が圧迫されると麻痺が生じることがあります。治療法は、癌そのものに対する化学療法・ホルモン療法が基本です。麻痺が生じた場合は固定術などの手術が必要ですが、予後は不良ですので神経症状が出る前に早期発見が重要です。

6.ステロイド治療、関節リウマチ、糖尿病などの生活習慣病

ステロイドは少量であっても長期にわたると破骨細胞の活性化と骨芽細胞の抑制により骨折リスクが高まります(ステロイド性骨粗しょう症)。3か月以上ステロイド治療を受ける場合は骨粗しょう症治療が必要です。また、糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎不全の既往歴がある場合、骨質劣化による骨折リスクが高いので、注意が必要です。

7.HIVの感染、化学療法、免疫抑制剤治療の既往

疾患や治療薬によって免疫不全状態になっている場合、腰部周囲の骨・椎間板・筋肉などに感染が生じる場合があります。感染が生じる場所によって出現する症状は様々です。  

8.栄養不良、体重減少

栄養状態が急激に悪化した場合は悪性腫瘍または感染症特に脊椎カリエスなどの慢性的な感染症に注意が必要です。また、脊椎圧迫骨折が進行すると亀背が進行し、肺や消化管の行き場がなくなってしまい内臓の機能が低下して食欲低下、心肺機能の低下、全身状態の悪化につながります。

9.広範囲に及ぶ神経症状・構築性脊柱変形(円背など)

広範囲に及ぶ神経症状や亀背円背を認める場合は多発性脊椎圧迫骨折を疑います。背骨の骨折である脊椎圧迫骨折は、高齢者における急性腰痛の原因として一番多く、寝たきりの原因や生命予後にも影響を及ぼす骨折として重要視されています。
脊椎圧迫骨折骨粗鬆症との関わりが深く、閉経後の女性に多い疾患です。骨粗鬆症患者は、現在日本で1,300万人を超えると言われています。骨粗鬆症性の方は、尻もちをついた時や重い物を持った時など、弱い外力で骨が折れてしまうことがあります。起き上がる瞬間に鋭い痛みが生じ、起きてしまえば痛みは軽減するのが脊椎圧迫骨折の特徴です。また、特に胸椎における圧迫骨折では自覚症状に乏しく、いつの間にか骨折が生じている場合があります。 脊椎圧迫骨折の治療は、患部にコルセットを装着して骨が癒合するのを待ち、この間鎮痛薬などの薬物療法やリハビリテーションをおこなうのが原則です。しかし、進行性の骨折には、手術療法も検討されます。

10.発熱を伴う腰痛

腰部周辺の感染症を疑う必要があります。腰痛を引き起こす感染症で最も注意が必要なのは、化膿性脊椎炎脊椎カリエスです。
これらは、感染した細菌が血流によって脊椎に運ばれることで椎体に感染する疾患です。感染症を起こす原因によって疾患名が付けられており、黄色ブドウ球菌が原因の場合は化膿性脊椎炎、結核菌が原因の場合は脊椎カリエス(結核性脊椎炎)と呼びます。40~50代に多いとされており、どちらも膠原病、糖尿病、悪性腫瘍、透析患者さんなど、疾患または治療薬により免疫力の低下している人に起こりやすい疾患です。 急性の化膿性脊椎炎は、激しい腰痛や背部痛に加え、高熱がみられます。慢性の場合には、痛みは比較的軽症です。また、脊椎がつぶれたり、脊髄の周囲に膿がたまったりすることで神経が圧迫され、下肢の麻痺が起こる可能性があります。 脊椎カリエスは、微熱、食欲不振、倦怠感などの症状がみられます。化膿性脊椎炎に比べると腰の痛みは少なく、ゆっくりと進行します。しかし、ヒトは結核菌に対する抵抗力が弱いため、広範囲にわたって椎間板や脊椎の破壊が起こる可能性があるので、早期に発見し、治療をすることが大切です。 また、腸腰筋膿瘍など傍脊柱筋肉内に生じた膿瘍が腰痛の原因になることもあります。 通常の急性腰痛症は少なくとも4週間程度様子を見れば痛みは軽快するものですが、これらの疾患の場合は6カ月以上腰痛が続きます。

11.安静によって増悪し、運動で軽快する腰痛

炎症性腰痛は一般的に若い成人に多くみられる腰痛で、主に炎症に起因するものです。このタイプはしばしば夜間や早朝に悪化し、安静によって軽快せず、運動によって軽快することが多いのが特徴です(そうではない人もいるので注意が必要です)。炎症性腰痛脊椎関節炎乾癬性関節炎反応性関節炎炎症性腸疾患未分類の脊椎関節症などの疾患の症状である可能性があります。 診断には病歴の取得、身体所見、血液検査(炎症性マーカー、HLA⁻B27など)、脊椎及び仙腸関節のX線検査やMRI検査が有用です。 炎症性腰痛が疑われる場合にはリウマチ専門医特に炎症性腰痛疾患に詳しいリウマチ専門医の診断が必要です。

各疾患の詳細はホームページ内の疾患説明を参照してください。

これらのレッドフラッグが一つでも該当する場合、特定の診断や追加の検査が必要になることが多いです。ただしこれらの症状が存在するからといって必ずしも重大な疾患があるわけではありませんが、それらの可能性を除外するために医学的評価が必要になります。
内科的な疾患以外は問診と身体所見の診察と腰椎レントゲン検査を行なうことで診断できる可能性があります。
年齢やこれまでの病歴、全身症状などを加味し、「ちょっと変だぞ」と思う症状があれば、腰痛に隠された重篤な疾患を疑って病院を受診しましょう。
また、筋筋膜性腰椎であっても、慢性化すると日常生活動作に障害をきたします。慢性化を防ぐことが重要ですので、腰痛が長引いた場合、慢性化を防ぐために治療薬やブロックやリハビリテーションなどで一度しっかり痛みをとって、痛みのきっかけになっている原因が治っていることを脳にインプットすることが重要です。

『どうせ腰痛は病院にかかっても治らないから無駄だ』と諦めないで一度整形外科の病院またはクリニックを受診しましょう。

腰痛の原因となる代表的疾患とその頻度

Ⅰ機械的腰痛(97%)Ⅱ非機械的腰痛(1%)Ⅲ内臓疾患(2%)
筋筋膜性腰痛         70%
椎間板/椎間関節変性     10%
腰椎椎間板ヘルニア       4%
脊柱管狭窄症              3%
骨粗鬆症圧迫骨折         4%
腰椎すべり症          2%
外傷性骨折           <1%
先天性疾患           <1%   
脊椎後弯症   
特発性側弯症    
腰仙椎移行椎
変形性脊椎症
内因性椎間板破壊/生成
腰椎すべり症
腰椎分離症
悪性腫瘍       0.7%   
多発性骨髄腫   
転移性腫瘍   
脊髄腫瘍   
後腹膜腫瘍   
原発性脊椎腫瘍
感染症          0.01%   
骨髄炎   
椎間板炎   
硬膜外膿瘍   
帯状疱疹
炎症性関節炎     0.3%
  強直性脊椎炎
乾癬性関節炎
反応性関節炎
炎症性腸疾患
骨パジェット病
ショイエルマン病
骨盤臓器   
前立腺炎   
子宮内膜症   
慢性骨盤内炎症   
性疾患
腎臓疾患   
腎結石   
腎盂腎炎   
腎周囲腫瘍
大動脈瘤
胃腸疾患   
膵炎   
胆嚢炎   
腸穿孔性潰瘍
DeyoらN Engl J Med. 2001 Feb 1;344(5):363-70.より改変
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