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COLUMNコラム

2023.09.26

人工膝関節置換術(TKA)はこんな病院で受けた方がいい ~私が提案する手術を受ける病院を選ぶときに気を付けるべき8項目の基準

大物歌手の和田アキ子さんが変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術(TKA)を受けた様子がテレビで流れていました。術後経過は良好のようでさすが大物芸能人だけあってリハビリの途中で退院してテレビに出演したのには驚きました。

人工膝関節置換術(TKA)末期変形性膝関節症患者さんの膝痛を軽減するためには非常に有効な手術で多くの患者さんが術後痛みなく歩けるようになったと満足していただける手術です。
名医といわれる有名な医師の手術を受けたとの事ですが、みんなその病院で手術を受けたらいいのかというと必ずしもそうではありません。

そもそも名医って何を基準に誰が名医と名付けたのでしょうか?少なくとも雑誌やメディアでいう『名医』はお金で買える称号の場合もあり、必ずしも真実とは限りません。実際に名医もいるでしょうし、それをきっかけに患者さんが集まって手術を多数経験して上達されて名医になっていくであろう側面はあります。

実際にご自身が近医から人工膝関節置換術(TKA)を勧められたときにどこの病院で誰の手術を受けたらいいのか誰もが迷うのではないでしょうか。

私も2022年11月に開業する前は勤務医として人工膝関節置換術(TKA)をメインの手術として多くの患者さんの手術を執刀させていただきました。勤務医の時に巷では有名な医師に手術を受けて結果がよくなかったり、症例数を増やすためにどう考えてもやりすぎ(オーバーインディケーション:過剰適応)じゃないかという症例を散見しました。
最終的には一致するのかもしれませんが、手術が上手なことと宣伝が上手なことは異なります。
本当は実際に手術を受けた患者さんの満足度、術後の関節可動域、日常説活動作の評価、長期成績、合併症の頻度を客観的に評価すべきですが、残念ながらそのような評価機関はありません。

元人工関節医であった私の経験から人工膝関節置換術(TKA)を受ける時にどのような点をふまえて病院選びをするべきか、基準になる8項目について私見を述べたいと思います。  

手術を受ける病院を選ぶときに気を付けるべき8項目

  1. 手術件数が多い病院がいい
  2. 人工膝関節置換術(TKA)に特化した専門医がいい
  3. 設備が整った病院がいい
  4. 患者さん満足度を上げる手術をしている病院がいい
  5. 自宅からあまり遠くない病院がいい
  6. 手術時間は長くないのがいい
  7. 手術説明を家族と一緒にきっちり納得するまで説明してくれる病院がいい
  8. 様々な選択肢に対応でき、信頼できる医師がいる病院がいい      

①手術件数が多い病院がいい

どんな手術や手技でもいえることですが、たくさんの数を経験している方が上手になりますし、その病院のシステムもだんだん効率的に洗練されていきます。月に1-2件程度、年間20件程度しかしていない施設よりは年間500件以上やっている病院の方が信頼できるでしょう。
毎年手術件数が載った雑誌が発行されていますが、それだけ集客ができるほどの評判も含めてある意味数字が真実を語っていることが多いように思います。年間に行なっている手術件数が最も重視すべき指標のひとつになるでしょう。
ただし、たくさんやっている病院が絶対お勧めできるかというと必ずしもそうではありません。手術件数が多くなればそれだけ件数をこなすために流れ作業になってしまうので、手術時間を短縮するために重要な手順を飛ばしてしまっている懸念はあります。

一方で例えば最先端の手術を行なっているであろう大学病院は手術枠が限定されているので手術件数は多くないけれど、数ばかりこなすのではなく最新の技術を用いた丁寧な手術をしっかり行なっている施設もあります。
例えばナビゲーションロボット手術を使って行なう場合は使わない場合と比較してどうしても時間がかかってしまうので、ある意味効率が悪くコストもかかってしまいます。
整形外科単科の個人病院は、基本手術は整形外科だけなので、医師の裁量で自由に手術枠を設定できるので、やろうと思えばたくさんの手術数をこなせますが、総合病院ではいろんな科が手術しており整形外科の中でも人工関節だけしているわけではないので手術枠に限界があり、増やしたくてもすぐには増やせないのです。執刀医の手術件数が多い方がいいのですが、かといってこなしている数が多ければ必ずしもいいというものではく、週に2件以上手術していれば手術の感覚を忘れずにいい状態で維持できているように思います。一方で夏休みなどで1週間空いてしまった後手術をする時は少し緊張して、少し手術時間がかかってしまうことがあります。

私的な意見では一人の専門医が少なくとも週に2件以上コンスタントに執刀して年間100件以上人工膝関節手術の執刀をしているような医師に執刀してもらうのがよいと考えます。  

②人工膝関節置換術(TKA)に特化した専門医がいい

整形外科の手術は今や分野によって細分化されており、スーパードクターであっても一人の医師が全部の手術に対応する時代ではありません。同じ人工関節でも人工股関節と人工膝関節では求められる手技も知識も全く異なります。人工関節を専門にしていてもメインは人工股関節置換術(THA)であったり、膝関節専門といってもスポーツ整形外科の鏡視下手術がメインである場合、片手間に人工膝関節置換術(TKA)をやってたりする場合が多々あります。
いくら手術が上手で評判が良くても、それは人工膝関節置換術(TKA)に関する評判ではないのかもしれません。

大事な自分の膝を委ねるのであれば人工膝関節置換術(TKA)に強い思い入れがあり、それをメインに手術をしている医師に任せるべきと考えます。どのくらい人工膝関節置換術(TKA)に熱心に取り組んでいる人工膝関節エキスパートであるかはホームページを見ればある程度分かりますので受診する前に病院ホームページをチェックしましょう。

特に人工膝関節置換術(TKA)エキスパートか否かはゆるんだ人工関節の入れ替え手術をする人工膝関節再置換術(TKA revision)をうまく手術できるかという要素が考えられます。変形の少ない初回手術なら専門にしていなくても多くのベテラン整形外科医ならある程度は可能ですが、再置換術となるとハードルが上がります。さらに再置換術の骨欠損が大きい症例は特別なインプラントの経験や同種骨の準備が必要な場合もあり、全ての病院でできる手術ではありません。
人工膝関節再置換術を年間何件くらい行なっているかもエキスパート医師がいるかの指標になります。 また、通常のTKA(TKA-PSやTKA-CR)では前十字靭帯(ACL)は切除するのでACL切除による不安定性が生じ、インプラントに誘導される膝の動きに代わり、さらにACLにある深部知覚が失われますので、走るなどの激しい運動が困難になる場合が多いです。最近では通常切除してしまう前十字靭帯(ACL)後十字靭帯(PCL)両方を温存したTKA-BCRが問題なくできるかどうかも指標になります。適応症例は限られますが、元の膝の機能が保たれるので『走れる人工関節』とうたわれており、うまくいけば満足度が高い結果が得られる可能性があります。
この手術がうまくできる医師は人工膝関節置換術(TKA)エキスパートであると言えますが施設はかなり限られています。

最近では人工関節学会が設立した人工関節認定医制度があります。学会への5年以上の登録と学会活動や執刀または指導した50例の手術報告が必要なので、経験のある人工関節医を選ぶ一つの指標になるかと思います。
一方で大阪府内だけで2023年9月現在100人以上の認定医がおり、登録にはあまりハードルは高くないのと、膝も股も人工関節全てひっくるめられているので、必ずしも人工膝関節の業績とは限りませんので注意が必要です。  

③設備が整った病院がいい

人工膝関節置換術(TKA)を受けるにあたっては執刀医のみならず、その病院の環境も重要です。人工関節は術後感染予防のために様々な工夫が必要です。近年感染予防としてのエビデンスが少ないことも指摘されていますが、落下細菌軽減のために通常の手術室より清潔度が高いクリーンルームは必須ですし、多くの施設ではヘルメット特別なガウンを装着して手術に臨みます。
実際にはこれらを導入するのが病院側の持ち出しになるので、コストのかかってしまう感染対策なのです。正確な骨切りのためにナビゲーションロボット手術も診療報酬としてナビゲーション加算は取れますが、機器購入(数千万から1億円)やランニングコストを考えると病院の収益としては大きくマイナスになる場合が多いです。人工膝関節置換術(TKA)を受けるために、手術のための設備が整った病院が患者さんの合併症を減らし、長期成績を改善してくれる可能性が高いと思います。

また、特に高齢者の場合は急変時に24時間対応可能な病院がいいでしょう。
術後合併症に注意が必要な高齢者や既往歴のある患者さんは循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、精神科など様々な急変に対応できる医師、看護師、検査、当直体制などが揃った総合病院での手術が安心だと思います。ICU(集中治療室)があればよりいいでしょう。
入院中コロナ感染して重症化するリスクも頭の片隅に入れておかなくてはなりません。
また、約2週間もの間入院するわけですから、その間快適に過ごせるような病棟・リハビリ室・売店なども充実しているのか可能であれば見学に行っておいた方がよいでしょう(コロナ後は難しいかもしれませんが)。
ナースやリハビリスタッフ、食事などの評判に関しては入院した経験のある患者さんの口コミくらいしか評価が困難です。術後病室生活を快適に過ごすためには最も重要ですが、担当は入院前には決められないし、日や時間帯によって担当が変わってしまうので、運を天に任せるしかないでしょう。  

④患者さん満足度を上げる手術をしている病院がいい

よい人工膝関節手術とは ①術後痛みがしっかり取れて②O脚X脚が矯正されて真っ直ぐになっている③良好な可動域④長期成績がいい⑤術後合併症が少ない という5つの項目を満たしているものが術後の満足度が高い人工膝関節といえるでしょう。
それぞれの項目についてどのように医師・病院選びをすべきか解説します。  

術前あった痛みがしっかり取れる

人工膝関節置換術(TKA)を受ける場合、多くの患者さんは痛みが軽快して、日常生活が楽に過ごせるようなることを希望して手術を受けます。
非常にいい手術で、ある程度経験のある医師が執刀すれば、多くの場合術前のような膝の痛みは軽快します。術直後は膝の腫れと曲げ伸ばし時の痛みが生じることはありますが、多くの場合は徐々に軽快します。逆に痛みが取れなければ手術する意味がないとも言えます。
これに関してはある程度以上の手術の経験がある病院であれば、施設による差は少ないと考えます。

O脚X脚が矯正されて真っ直ぐになっている

人工膝関節置換術(TKA)の術後は基本的に大腿骨骨頭中心と足関節中央を結んだ線が膝関節の真ん中を通るようになるのが理想的とされています。
一方で最近はキネマティックアライメントといって脛骨を3度程度内反に骨切りする方が術後成績が良いとの報告があります。いずれにせよ正確な骨切り術をいかに短時間で行なえるかが重要です。
経験豊富な上手な医師が人工膝関節置換術(TKA)をすると、ほとんどの場合正確な骨切りできれいな真っ直ぐな脚にしてくれますが、どうしても人間のやることなので、たまに目標と異なる骨切りをしてしまうことがあります。例えば正面像で内外反の骨切りが目標より3度以上逸脱してしまうと、長期成績に影響してしまい、早くゆるみが出てしまう可能性が高まります。
その欠陥を補って正確な骨切りをしてくれるのがナビゲーションロボット手術です。ロボットではさらに機械が正確な骨切りをしてくれるのでより目標通りの正確な骨切りをしてくれる確率が高まります。
病院側にとってはコストも手術時間も手間もかかってしまう処置であり、まだまだ導入している施設は少ないですが、近い将来多くの施設で導入されることになると思われます。術者の技量にかかわらず得られる正確な骨切りによる良好な長期成績に関してはナビゲーションロボット手術を導入している施設が有利で安心と考えます。

良好な可動域

変形性膝関節症に罹患すると正座が困難になり、徐々に曲げ伸ばしの可動域が低下し、術前多くの患者さんは関節可動域制限が残存します。一方術後どれだけ可動域が回復するかは術者の技量によります。
具体的には余分な骨棘を丁寧に切除したり、後方関節包の処理を丁寧に行ない、靱帯バランスを調整することや、インプラント機種選択も重要です。これらの工夫がなくても手術は普通に終わりますが(やっているかやっていないか患者さんにはわかりません)、どれだけこだわって工夫して手術をしているかが重要です。

私が手術をしていたころは、多くの患者さんで屈曲120度以上伸展0度を達成していました。そうするためには術中様々な工夫が必要ですし、当然ですが少し時間が余分にかかります。術前の可動域にもよりますし、術後のリハビリを患者さんがどれくらい頑張るかにもよりますが、術後90度も可動域が得られていない場合はあまりいい手術ではないかもしれません。
また、良好な可動域を得られるためには術後痛みのコントロール理学療法士によるリハビリテーション、退院してからの自宅での自主訓練をしっかり指導し、患者さんに実行してもらうことも重要です。

長期成績がいい

ほとんどの人工膝関節は50年経ったらゆるみが生じて再置換術を要します。一般的な人工関節の寿命として体重・年齢・活動性もよりますが、骨折や感染がなく大切に使えば10年で90%以上20年で70-80%の膝関節が再置換術を要することもなく、結構長持ちします。一方で施設ごとの長期成績に関しては最も重要ですが、10年20年経過しないとわからないので評価が難しいです。また、手技やインプラント素材やデザインの改良により、長期成績はもっと改善してゆくと思われます。自院での長期成績を発表している病院もありますが、10年前20年前の手術なので、今の手術に関しては不明です。一方で適切な手技、正確な骨切り、適切な人工関節の設置を行なえば、どの施設でもある程度長期成績は良好と思われます。

術後合併症が少ない

どんな優れた術者が手術をしても合併症ゼロということはあり得ません。人工膝関節置換術(TKA)には感染長期的なゆるみ出血創部の離開可動域低下骨折(特に膝蓋骨骨折)、疼痛の残存深部静脈血栓症から肺梗塞金属アレルギーなどの合併症が生じる可能性があります。それぞれの施設でどのくらいの頻度で合併症が生じているかを報告しているところは少ないので比較できませんが、それらの合併症に十分な対策をしている病院がいい病院と考えます。

さらに満足度を上げるには、10cm以下のできるだけ小さい皮切で手術をする(MIS,Minimally Invasive Surgery:最小侵襲手術)、靱帯を温存して手術をする(TKA-CR、UKA、TKA-BCRなど)、その他セメントを使うか使わないかとかや膝蓋骨を置換するかしないかは議論のあるところですし、きれいな傷の縫合にこだわるとか、洗浄や止血をしっかりするかなどがあります。
特に以前私もMISで(女性なら8-10cmくらいの皮切)人工膝関節置換術(TKA)をやっておりましたのでわかりますが、MISのような小さい皮切で手術をするには高い技術が必要ですが、見た目にわかるので術後の患者さん満足度が高いです。
おそらく頻繁にミニスカートを履くわけではないので他の人に傷を見せることはめったにないでしょうが、特に他の施設で大きな皮切で手術された方と比べた時に満足度を感じられる患者さんもいるようです。

また、術後麻酔が切れた後は骨や軟部組織をたくさん切るので、かなり手術部の痛みが強くなることが予想されます。術後の痛みを完全に取ることは困難ですが、その対策として術後鎮痛剤はもちろんですが、術中持続硬膜外麻酔神経ブロックを併用することが重要です。そのような鎮痛対策をしっかりしてくれる病院がいい病院です。

上記内容を全部行なうことは不可能ですが、患者さんがより満足してもらえるようになるべく多くの工夫をしている病院が人工膝関節置換術(TKA)を受けるのにいい病院といえるかと思います。  

⑤自宅からあまり遠くない病院がいい

稀に北海道の病院などへ飛行機に乗って遠方まで手術を受けに行ったという患者さんがおられます。その手術先は高名で立派な医師がいるかもしれませんが、人工膝関節置換術(TKA)に関してはわざわざ遠方まで行くことには疑問を感じております。
医療過疎地の場合、話は異なるかもしれませんが、私の住んでいる大阪では近くに有能な人工関節専門医がおりますし、人工関節で使用可能なインプラントは全国どこでも同じで価格も同じです。そこでしかできないまれな疾患に対するまれな手術なら仕方ありません。手術だけのことを考えるとそれでもいいのですが、その後合併症特に骨折や感染が生じた場合は緊急を要することもあり、その時すぐに手術を受けた病院まで駆け付けられるのか、すぐに診てくれるのかを考えて手術を受ける病院を考えるべきです。
特に万一人工関節の深部感染が疑われる場合は予後に影響しますのでなるべく早く手術して洗浄処置等を受けることが必要ですが、前医での手術した時の情報がなければ、初診で診てもらう近くの病院では対応してくれないか、適切な対応ができない可能性があります。万が一の時は救急車が病院まで運んでくれるまたは家族に車で運んでもらうことが可能な距離の救急対応可能な病院で手術をするべきと考えます。

もし遠方の病院で手術をする場合は、いざという時の近くの頼れる病院との連携をお願いしておきましょう(人工膝関節後の深部感染の治療は非常に大変で、緊急処置と豊富な経験と知識が必要です。他院で行なった手術を通常近くの病院は受けるメリットがないし、治療に難渋することはわかっているので嫌厭されます)。  

⑥手術時間は長くないのがいい

どんな手術でも言えることですが、手術時間は短い方がいいです。上手だから手術時間が短いとは限りませんが、手術が上手な人は手際が良くて無駄がなく、トラブルに対する経験も豊富で、思い切りが良くて手術が早いです。
一般的に手術時間が短い方が出血や術後感染などの合併症が少ないことが知られています。
人工膝関節置換術(TKA)では出血を気にせず手術できるようにタニケットで駆血しながら手術をすることが多いですが、2時間以上続けると術後タニケット障害といって阻血障害によるしびれや筋力低下などの合併症が一時的に生じてしまうことがありますので2時間以内での手術が望まれます。
一方で人工膝関節置換術(TKA)はだいたい日本で使用できる機種は決まっているので似たような出来上がりにはなりますが、その内容は施設によって千差万別です。人工膝関節置換術(TKA)は同じ手術でも様々なこだわりポイントがあります。特に変形が高度で難しい症例や可動域制限がある場合にはそれらの技を駆使して可動域が良くて長持ちする人工膝関節置換術(TKA)を目指します。

こだわったから絶対いい結果になるとは限りませんが、できるだけ長持ちして、術後の痛みなく、よく曲がる人工関節をするためには様々な工夫が必要です。それらをなるべく全部をこだわってやると手術が終わりませんので、術者はその中の重要であると思われる必要なこだわりポイントを選んで手術をします。
新しい手技やインプラントをチャレンジすれば当然手術時間が長くなります。ナビゲーションロボットを使うとその分時間がかかりますし、プランニングのために特別な術前計画を要します。
個人の技量にもよりますが、手術時間が平均的には全人工関節置換術(TKA)では1時間半以内程度で終わるのが理想ですが、それ以上かかるくらいより良い結果のためにいろいろこだわって工夫したとしても2時間以内で手術が終わるのが望ましいと考えます。
一方で早く終わる手術が良いのは間違いありませんが、早く終わりすぎる手術は上手かもしれないが場合によってはこだわりが少なくただ流れ作業になっている場合がありますし、遅い手術はこだわりすぎるか経験が少なくあまり上手でない可能性があります。
難しい症例の場合は別ですが、手術開始から閉創までいつも2時間を軽く超えているような手術は避けた方がよいかもしれません。
手術前に平均手術時間を主治医に聞いてみるとよいでしょう。  

⑦手術説明を家族と一緒にきっちり納得するまで説明してくれる病院がいい

なんといっても自分の膝、自分のその後の運命を委ねるわけですから、医師との信頼関係は重要です。
大きな病院の有名な医師であってもご自身の納得できる説明や質問に対する回答が得られない場合は手術を受けるべきではないと考えます。実際には人気のある整形外科医師は外来と手術で忙しくて昼ご飯を食べる暇もないことも多々あり、イライラしているかもしれません。
もともとの性格にもよりますが優秀な整形外科医はせっかちな人が多いです。忙しいので多分イライラしているであろうという前提で、聞いておきたいことは時間がかかってもしっかり聞いておいてください。
人工膝関節の専門医なのかとか、今まで何例くらい手術をしてきたのか、骨切り術(HTO:高位脛骨骨切り術)の適応はどうかとか、この手術において医師が最も重視すべき部分はとか、ちゃんと全部先生が手術をしてくれるのかとか、こんな治療法や手術があるって聞いたけどここではやっていないのかなど、初診時または術前説明の時に効率よく質問できるようにある程度聞きたいことやお願いを準備してまとめてメモしておいて聞きましょう。
できれば『忙しいのにいろいろ聞いてすみません』と一言添えてあげてください。

今時少ないとは思いますがいいことばっかり言って合併症の話やその確率を話してくれない医師は信用できません。かつて患者さん向けの講演会で『当院での人工膝関節置換術後の感染した患者さんはゼロです』と患者さんを集めてたくさん手術をしていた医師が執刀した患者さんは、感染が起こると診てもらえませんでした。どう工夫して努力しても人工関節後の感染はゼロにはできないので、しっかり術前から話をしておいて早期発見して早期治療につなげることが重要です。  

⑧様々な選択肢に対応でき、信頼できる医師がいる病院がいい

変形性膝関節症といっても病態は様々ですし、重症度によって手術難易度も異なります。
例えば大腿骨内側顆骨壊死のような病態に対しては全人工膝関節置換術(TKA)よりは内側だけ人工関節に置換する単顆型人工関節置換術(UKA)のほうが低侵襲で靱帯機能が保たれるので症例によっては選択すべきと考えます。また、最近前十字靭帯(ACL)後十字靭帯(PCL)を温存して手術するTKA-BCRという機種もあり、生理的な膝の動きが温存され、安定感があるので『走れるTKA』として注目されています。
手術方法はその患者さんの病状によって異なり、全ての患者さんの状態に適応できる手術方法、インプラントというのはありません。患者さんの病状や年齢、日常活動性に応じて手術方法やインプラントを選択して丁寧に説明してくれる医師がいいと思います。
たとえ末期変形性膝関節症(関節裂隙が消失している)であっても痛みがあまりなかったり、本人が望まなかったりする場合は手術すべきではありません。
一方で強い痛みがあっても進行期変形性膝関節症(関節裂隙は少し残存している)なら骨切り術や場合によってはヒアルロン酸注射足底版リハビリPRPなどの再生医療による保存療法の適応も考えるべきです。
大腿骨内側顆骨壊死の患者さんでも、発症直後は激痛ですが、その後あまり痛がっていない患者さんもいます。手術ありきではなく保存療法の適応も含めて一番いい選択肢を考えてくれる医師が信頼できると考えます。
人工膝関節置換術(TKA)は手術を受ける時が何といっても最も重要ですが、手術を受けたらそのまま一生大丈夫とは限りません。骨折・感染・ゆるみが生じて再手術が必要な場合があります。従って手術をやりっぱなしではだめで、定期的なフォローアップが必要です。大学の関連病院内での異動が頻繁にあったり執刀医がずっと同じ病院にいるとは限りませんが、その病院の院長や部長、看板になる医師はそう簡単には異動しません。医師との相性の問題もありますので第一印象では信用できるかどうか決められませんが、長く付き合えそうな、信頼できる医師に納得して手術してもらうのがいいでしょう。

以上が元人工膝関節医であった私が考える手術する病院選びに重要なポイントです。

  1. 手術件数が多い病院がいい
  2. 人工膝関節置換術(TKA)に特化した専門医がいい
  3. 設備が整った病院がいい
  4. 患者さん満足度を上げる手術をしている病院がいい
  5. 自宅からあまり遠くない病院がいい
  6. 手術時間は長くないのがいい
  7. 手術説明を家族と一緒にきっちり納得するまで説明してくれる病院がいい
  8. 様々な選択肢に対応でき、信頼できる医師がいる病院がいい      


私自身なるべく全部に当てはまるように心がけていたつもりではありますが、全部の項目を完璧に満足させられる医師・施設はないと思います。
また、経験豊かな上手な医師が予定プラン通りの手術を行なっても、痛みが残存したり、思うように可動域が得られなかったり(これはリハビリ不足や不適切なリハビリ、疼痛管理不足なども影響します)、ある一定の確率で術後合併症が生じてしまったりすることはありますので、手術を受けた患者さんがみんな満足いく結果を迎えられるとは限りません。
しかしそういった不満足な症例が起こる確率を減らすのがいい病院・いい医師選びの目標とするところです。

情報誌やホームページ、インターネットなどの評判や知り合いの口コミ、かかりつけ整形外科と相談の上、手術を受ける病院選びは慎重に行なってください。

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