〒567-0801大阪府茨木市総持寺1丁目3-2
総持寺クリニックビル3階
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※休診日:水曜日午後、土曜日午後、日・祝
※電話受付:8:45~12:00 / 15:45~19:00 / 土曜日のみ 8:45~13:00
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こんにちは。整形外科・リウマチ・リハビリの専門医として、日々多くの骨粗しょう症患者さんと向き合っています。診察室でよく耳にするのは、「薬を飲み始めたら一生やめられないのでは?」「副作用が怖くて……」という不安の声です。「年のせいだから、腰が曲がっても仕方ない」「転んだら骨折するのは当たり前」……。
もし、あなたがそう思っているとしたら、それは大きな誤解かもしれません。
しかし、医療は日々進化しています。2025年、世界で最も権威のある医学雑誌の一つ『The Lancet(ランセット)』に掲載された最新のレビュー(総説)では、骨粗しょう症治療がいかに劇的に進化し、単なる「老化予防」ではなく「寿命を延ばし、生活の質を守る治療」になったかが詳しく論じられています。
今回は、最新の世界基準(グローバル・エビデンス)に基づき、骨粗しょう症治療の「いま」を、専門医の視点でわかりやすくお伝えします。
骨粗しょう症とは、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気です。 例えるなら、「家の柱がシロアリに食われてスカスカになっている状態」です。外見からは分かりませんが、ある日突然、ちょっとした衝撃で柱が折れ、家全体が傾いてしまいます。
骨粗しょう症の恐ろしさは、骨折そのものよりも、その先に待っている「負の連鎖」にあります。特に背骨(脊椎)や付け根(大腿骨)を骨折すると、移動能力が著しく低下します。これが原因で心肺機能が落ちたり、認知症が進んだりすることで、寿命そのものに影響を及ぼすことが分かっています。
骨粗しょう症の治療は、一人ひとりの「骨折リスク」に合わせて組み立てます。
食事(カルシウム、ビタミンD、タンパク質)と運動は、どんなに良い薬を使っても欠かせない土台です。
「骨を壊すのを抑える薬(骨吸収抑制薬)」と「骨を作るのを助ける薬(骨形成促進薬)」があります。
専門の理学療法士による指導で、転倒しないためのバランス能力を鍛えます。
「健診で骨密度が低い」と言われたら、早めの受診を。
当日結果がわかる骨密度検査を実施しています
最新の医学雑誌『The Lancet 2025; 406: 2003-16』や、欧米の主要ガイドラインから、現在の治療のスタンダードをご紹介します。
骨密度は骨折リスクを規定する最も重要な因子です。一方で意外かもしれませんが、大半の骨折は骨密度の指標(Tスコア)が「-2.5」(若年成人比YAM値70%以下)より良い数値(骨粗しょう症と診断されない範囲)の人で発生しています。それには大前提として非骨粗しょう症の人のほうが圧倒的に数が多いこともありますが、骨密度だけを過信せず、年齢や過去の骨折歴、生活習慣などの「臨床因子」を加味した総合的な評価が不可欠です。
一度骨折すると、次に骨折するリスクが急増します。特に骨折後の最初の2年間は、再骨折の約半数が集中するといわれるほど危険な時期です。通常の指標ではこの「直近の危険」が十分に反映されないため、注意が必要です。
米国予防医学作業部会(USPSTF)などは、「65歳以上のすべての女性」に骨密度検査を推奨しています。カナダなどの一部の国では、男女ともに70歳以上での検査を勧めています。一方で女性では閉経というイベントがあるため、比較的若年でも骨密度が低下している方を散見します。国によって医療制度が異なるため希望しても骨密度検査を希望しても保険では検査できないようです。私自身は比較的検査を受ける自由度が高い本邦では、50歳以上少なくとも60歳以上になれば一度検査を受けることをお勧めしています。
健康な成人がビタミンDだけを単独で補充しても、転倒や骨折を減らす効果はないことが示されています。ただし、すでに骨粗しょう症の人や、ビタミンDが欠乏している人についてはこの限りではありません。
サプリで摂る場合、1回量は500mg以下に抑えるのが理想的です。食事と合わせて1日700〜1200mgを目指しますが、食事からの摂取を優先しましょう。過剰なカルシウム摂取は動脈の石灰化による心血管イベント発生率の増加につながります。なお、胃酸を抑える薬(PPI)を長期間服用中の方は骨折リスクが高く、クエン酸カルシウムの検討が必要な場合があります。
最新の知見では、「骨を作る薬(骨形成促進薬)」を先に使い、その後に「骨を守る薬(骨吸収抑制薬)」へ移行するという順番が最も効果的だとされています。先に飲み薬(ビスホスホネート薬)を3年以上使ってしまうと、その後に作る薬を使っても、骨を増やす反応が約3分の1も減ってしまうことが分かっています。
多くの研究で、骨折を抑制する効果は「骨を作る薬」の方が「骨を守る薬」よりも高いことが報告されています。ただし、PTH製剤などの一部の薬剤では、注射後の血圧低下・悪心・発熱などの副作用が比較的多いこと、大腿骨頚部の骨折抑制効果のエビデンスが限定的な場合もあり、時に皮質骨多孔化により大腿骨近位の骨折リスクを高める可能性があることも注意が必要です。
「デノスマブ(プラリア)」という注射薬は非常に効果的ですが、自己判断で中止すると、最大8〜10%の人に背骨の骨折(椎体骨折)が起こるという報告があります。中止する際は、必ずゾレドロン酸などの別の薬へ計画的に引き継ぐ必要があります。
最も多くの患者さんで投与されているビスフォスフォネート製剤は腎機能低下患者に対して慎重投与が必要です。特に、クレアチニンクリアランスが30mL/分未満のCKDステージ4患者さんでは排泄が遅延するおそれがあるため、禁忌とされています。重度の腎機能障害(CKDステージ4-5D)がある方にデノスマブを使用する場合、投与前にカルシウム値が正常であっても、「重篤な低カルシウム血症」を起こす懸念があります。活性型ビタミンDによる予防や慎重な管理が検討されます。
薬を飲んでいるのに骨折した場合、他の病気が隠れていないか(原発性副甲状腺機能亢進症や多発性骨髄腫、低リン血症など)を再評価する必要があります。 改めて精査する必要があります。
飲み薬(経口ビスフォスフォネート薬)を6〜12ヶ月以上、しっかり(遵守率70-80%以上)続けているのに骨折した場合は、十分吸収されていない可能性があります。100%血中に移行する注射薬(デノスマブや静注薬)や「骨を作る薬」への変更を検討します。
海外の優れたエビデンスをそのまま日本人に当てはめるには、少し工夫が必要です。
畳での生活や階段の昇り降りなど、日本特有の動作に合わせたリハビリテーションを組み合わせることが、実生活での骨折予防に直結します。もともとカルシウム・ビタミンD摂取量が欧米諸国と異なるので、
日本人は欧米人に比べて小柄です。人種の違いによる薬剤感受性の違いも指摘されています。胃腸への負担や、非常に稀な副作用である骨吸収抑制剤使用中の顎骨壊死への影響など(比較的アジア人で頻度が高いとの指摘がある)、日本人特有の反応を丁寧に見守る必要があります。
日本においては国民皆保険制度の下、厚生労働省が示す薬剤の適正使用が求められますが、欧米諸外国と比較して検査や治療開始基準が異なっている薬剤もあり、日本独自のエビデンスの蓄積が重要です。
今回のポイントを整理しましょう。
骨は、私たちの体を支える土台です。土台がしっかりしていれば、いくつになっても行きたい場所へ行き、会いたい人に会うことができます。
「自分は大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、まずは専門医のもとで適切な評価を受けることから始めましょう。私たちは、最新の知見に基づき、あなたの大切な骨を一生守り続けるパートナーでありたいと考えています。
あなたの「10年後、20年後の歩み」のために、今日から一歩踏み出してみませんか?
Osteoporosis. Lancet 2025; 406: 2003-16.
骨折する前に骨密度、一度確認してみませんか

中谷 宏幸
整形外科医、リウマチ医
整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医。大阪大学医学部整形外科教室に入局リウマチグループに所属して、リウマチ医、下肢人工関節、足の外科医として基幹病院での勤務医を経て2022年なごみ整形外科リウマチクリニックを開業
リウマチ性疾患の薬物治療、関節疾患(特に下肢関節)ペインクリニック(エコーガイド下ブロック・ハイドロリリース)、骨粗しょう症治療、足・膝・股関節、小児整形、リハビリテーション
日本リウマチ学会奨励賞
ISTU(国際超音波治療学会)Young investigator`s awardなど