茨木市総持寺の整形外科・リウマチ・骨粗しょう症・リハビリ・ペインクリニック・スポーツ整形外科

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COLUMNコラム

2026.05.12

新学期、学校健康診断の季節です。大切なお子様の「背骨と関節」を家庭で見守るポイント

春、新学期が始まると学校では健康診断が行われます。保護者の皆様のお手元にも、検診の結果や調査票が届く時期ではないでしょうか。

「学校の検診で再検査と言われたけれど、本当に大丈夫?」 「家で何に気をつければ、子供の成長トラブルに早く気づけるの?」日々の診察室では、このような不安を抱えたご家族から多くの相談を受けます。

実は、整形外科医の視点から見ると、学校検診はお子様の将来のQOL(生活の質)を左右する「骨と関節の成長サイン」を見逃さないための極めて重要な機会です。

私は現在近隣の小学校・中学校の学校医をしており、この時期毎週のように診察の間の時間を使って健康診断を行なっております。
よく内科検診と言われていますが、実際には運動器検診や他科の検診も含まれます。とはいっても内科の診療技術も必要なので、私自身も検診のためこの時期になると聴診の勉強をしたり循環器の勉強をして内科検診ができるようにトレーニングをして臨んでいます。

今回のコラムでは、学校医として診察を行なっている経験を基に、運動器検診にフォーカスを当てて、最新のエビデンスに基づいた「学校検診の正しい受け止め方」と「ご家庭でできるチェック法」について詳しく解説します。

学校での「運動器検診」とは何を診ているのか?

2016年度から、学校健康診断には「運動器検診」が必須項目として加わりました。運動器とは、骨、関節、筋肉、神経など、体を動かすために必要なパーツの総称です。

なぜ運動器を診る必要があるのか?

子供の体は、大人のミニチュアではありません。精神的にも肉体的にもまだ未熟な状態であり、大人では起こらないような症状や病気になることがあります。また、成長期特有の「骨が急激に伸びる時期」は、筋肉や腱の柔軟性が追いつかず、バランスを崩しやすいという特徴があります。

脊柱側弯症: 背骨が左右に曲がってしまう状態。
四肢の状態: 関節の動きが固い、あるいは逆に柔らかすぎる。
スポーツ障害: 成長痛だと思っていたものが、実は疲労骨折や剥離骨折だったというケースもあります。

これらを放置すると、成長が止まったあとに痛みが残ったり、将来的に変形性関節症などの原因になったりすることがあります。

ご家庭でできる「3分間セルフチェック」

学校での検診は限られた時間で行われます。そのため、最も身近にいるご両親が「普段の様子」を観察することが、早期発見の最大の鍵となります。以下の4つのポイントを確認してみてください。

① 前屈テスト(背中の左右差チェック)

お子様に両手を合わせて前にかがんでもらいます。

チェック: 背中や腰の高さに左右差がありませんか? 片方だけ筋肉が盛り上がっていませんか?もし左右差があれば側弯症のサインかもしれません。

② 肩とウエストのライン

鏡の前に真っ直ぐ立たせてみてください。

チェック: 肩の高さが左右で違わないか、腰のくびれ方が左右非対称でないかを確認します。

③ しゃがみ込み動作

かかとを床につけたまま、最後まで深くしゃがみ込めますか?

チェック: かかとが浮いてしまう、あるいは後ろに転んでしまう場合は、足首の関節やアキレス腱が硬くなっているサインです。

④ 片脚立ち

左右それぞれ5秒以上、ふらつかずに立てますか?

チェック: バランス感覚や体幹の筋力、股関節の安定性を確認します。

チェックで気になる箇所があれば、事前に学校から渡されている問診表に記載していただければ診察時医師に伝わるようになっています。より詳しい説明や詳細な問診については日本整形外科学会が提示している手引き・問診表を参考にしてください。

子供の運動器の健康 -学校における運動器検診の手引-

運動器(ロコモ)の状態に関する保健調査票

欧米のガイドラインと最新のエビデンス

日本の運動器検診の重要性は、世界的な医学的知見からも裏付けられています。

脊柱側弯症の早期スクリーニング

米国整形外科学会(AAOS)などの共同声明では、「特発性側弯症の早期発見には、学校やクリニックでの定期的なスクリーニングが有効である」と強く推奨されています。

特に、成長期に側弯が進行するリスクを予測し、適切なタイミングで「装具療法」を開始することで、将来的な手術を回避できる確率が大幅に高まるというエビデンス(BrAIST試験など)が確立されています。

Weinstein他,Effects of Bracing in Adolescents with Idiopathic Scoliosis.Stuart L. N Engl J Med 2013; 369:1512-1521

日本の子供たちを取り巻く現状

近年日本の臨床現場で注目されているのは、幼少期からクラブチームなどに所属して頑張りすぎる「運動しすぎ(オーバーユース)」(約40%)と家に閉じこもってゲームばかりしている「運動不足」(約45%)の二極化です。

スポーツを頑張る子

野球肘やオスグッド病(膝の痛み)など、成長期の骨に過度な負担がかかっている場合があります。「痛いと言えない」子供も多いため、検診がストッパーになる可能性があります。

インドア派の子

運動する機会が少ない場合、筋力や体の柔軟性が著しく低下し、いわゆる「子供ロコモ(ロコモティブシンドローム)」の状態にある子が増えています。

日本の住環境(和式から洋式への変化)により、日常生活で「深くしゃがむ」「床から立ち上がる」といった動作が減ったことも、子供の関節の柔軟性低下に影響していると考えられています。

現代病としての「スマホ首・猫背」

子供の身体活動(身体的リテラシー)の低下が将来の腰痛リスクを高めることが指摘されています。最近では日本でも、タブレット学習やスマートフォンの普及により、子供のストレートネックや猫背が問題となっています。これらは単なる姿勢の悪さではなく、将来の頸椎への負担に直結します。

よくある誤解・Q&A

Q1. 「成長痛」だから放っておけば治りますか?

A. 「成長痛」は夜間に痛み、翌朝にはケロッとしているのが特徴です。
もし「決まった場所がずっと痛む」「運動中や運動後に痛みが強くなる」「腫れている」といった症状がある場合は、疲労骨折や骨端症(こったんしょう)の可能性があります。自己判断せず受診をお勧めします。

Q2. 検診で「再検査」になったら、すぐに大きな手術が必要ですか?

A. 決してそうではありません。
再検査(二次検診)になった方の多くは、経過観察やリハビリテーションでの姿勢指導で改善します。大切なのは、「現時点で治療が必要な状態か、将来のリスクがあるか」を専門医が判定することです。

Q3. 学校検診はプライバシーに配慮してくれていますか?特に女の子なので心配です。

A. 現在ほとんどの学校では小学生からプライバシーへの配慮がなされています。
個室で個別に診察を行ない、裸で診察することは極力行われないように配慮されています。

私は学校医をしている小学校の高学年検診を担当していますが、男子女子ともに希望する児童は水泳の時に使う大きなバスタオルを巻いて直接裸を見ることなく診察しています。女の子はほとんどの児童でタオルを巻いています。女性の養護教諭や保健の先生、担任の先生などが2-3人がかりで児童を案内したり、児童の情報を伝えるなど診察を横で手伝ってくださっているおかげで安全に迅速に診察が出来ています。

中学校では基本的には同性の医師が診察に当たっています。実際どのような配慮がされているかどうかは学校によって異なるので、気になる方は直接学校に確認することをお勧めします。

親御さんへ伝えたいこと

学校検診の結果用紙に「要受診」のチェックが入っていると、驚かれるかもしれません。しかし、それは必ずしも病気というわけではなく、お子様の健やかな成長を守るための「チャンス」だと捉えてください。健康診断においてはスクリーニングという性質上問診・視診・触診が主なので、レントゲン等詳細な精査が出来ません。念のため医療機関に診てもらった方がいいという程度のものととらえておいてください。

成長期の骨は非常に柔軟で、適切な介入を行えば素晴らしい回復力を発揮します。逆に、この時期を見逃してしまうと、大人になってから修正することが難しいケースもあります。「要受診」のお知らせが来た場合は、なるべく早い時期に医療機関を受診しましょう。

検診は学年ごとの授業時間内に終了しなくてはならず、限られた時間でテンポよく行わなくてはなりません。症状を詳しく尋ねてもうまく答えられない児童が大半を占めています。内科的なことも含めて普段から気になる症状をお子さんとその症状についてどの程度困っているのか、頻度、期間について詳しく相談していただき、調査票に記載していただきたいと思います。

ポイント

学校の調査票は丁寧に記入する

診察する時間は非常に限られています。 特に小学生のお子さんに直接症状を聞いても、十分に伝わらない場合も多々見受けられます。迅速かつ正確な検診のために、些細な痛みや違和感も記入してください。

家庭でのチェックを習慣に

普段の特に運動時、お風呂上がりなどにお子様の背中や動きを見てあげてください。検診で異常を指摘されなくても、こまめなチェックで異常が見つかる可能性があります。

専門医を味方につける

整形外科は「痛くなってから行く場所」ではなく、「健やかな成長を確認する場所」でもあります。はっきり病名が分からないほどの変化でも、気になる症状があるときは整形外科を受診してください。

もし検診で指摘を受けたり、ご家庭のチェックで「あれ?」と思うことがあれば、どうぞお気軽に当院へご相談ください。レントゲン検査による正確な診断はもちろん、一人ひとりの成長段階に合わせた最適なアドバイスをさせていただきます。

この記事を書いた人

中谷 宏幸
整形外科医、リウマチ医

整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医。大阪大学医学部整形外科教室に入局リウマチグループに所属して、リウマチ医、下肢人工関節、足の外科医として基幹病院での勤務医を経て2022年なごみ整形外科リウマチクリニックを開業

専門分野

リウマチ性疾患の薬物治療、関節疾患(特に下肢関節)ペインクリニック(エコーガイド下ブロック・ハイドロリリース)、骨粗しょう症治療、足・膝・股関節、小児整形、リハビリテーション

受賞歴

日本リウマチ学会奨励賞
ISTU(国際超音波治療学会)Young investigator`s awardなど

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