最近外来をしていると急に足がつって激痛を伴うこむら返り（有痛性筋痙攣）でお悩みの患者さんによくお会いします。
一般的にはこむら返りは『冷え』が影響していると言われているので冬季に起こりやすいですが、夏のこの時期にも多く、夏の気候や筋肉の疲労、ミネラル不足水分不足がこむら返りの原因となります。

ここではこむら返りついてと対策方法について説明します。

こむら返りとは？

こむら返りは、筋肉が突然収縮（けいれん）して起こる症状です。主に夜間や安静時に足がつり、強い痛みや不快感を引き起こします。一番の好発部位はふくらはぎですが、全身の筋肉に起こる可能性があります。車の運転する時間が長い人、立ち仕事の多い人、高齢者に多くみられます。また妊婦の方には妊娠中のこむら返り対策も重要です。

ここでは主にふくらはぎ（腓腹筋）に起こるこむら返りについてお話しします。ちなみによく勘違いされることが多いですが、コブラ返りではなくこむらとはふくらはぎの事を意味します。

• 夜間の睡眠中
• 長時間の立ち仕事や座りっぱなしの状態での静止
• 運動やスポーツの後のリラックス状態
• 疲労が蓄積している時
• 水分やミネラルの不足があるとき

これらの状況下で、ふくらはぎの筋肉が収縮して痛みや不快感を引き起こし、こむら返りが発生することがあります。
特に夜間や安静時に起こることが多く、突然の痛みや強いけいれんが特徴です。

夏の気候がこむら返りを引き起こすメカニズムとは？

大きく分けると二つの理論が提唱されています。

脱水・電解質異常理論

古典的なメカニズムとして古くから提唱されてきたのは脱水と電解質異常が原因であるとする説です。一方で多くの反論するエビデンスがあります。脱水や電解質異常が原因ならなぜふくらはぎに起こるのか、マッサージがなぜ有効なのか興味のあるところです。

神経筋制御異常理論

筋肉収縮は脳からの伸び縮みせよという指令に基づいて動いています。

筋肉の中にある筋紡錘は筋肉が伸び過ぎないようにするセンサーの役割をしており、脊髄が感知すると縮ませる指令を反射的に出します。一方で筋腱移行部にある腱ゴルジ器官は筋肉が伸びたら脊髄から縮むよう指令を受け、筋肉が縮んだら伸びるように指令を受けます。こむら返りは何らかの刺激や変化により筋紡錘の求心性活動が興奮し腱ゴルジ器官の求心性活動が低下して起こる現象であると考えられています。

原因疾患

以下のような様々な疾患があるとこむら返りになるリスクが高いことがわかっています。

• 代謝疾患：糖尿病、腎不全、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症
• 脊椎疾患：腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症
• 関節疾患：変形性膝関節症、外反母趾症
• 血管疾患：動脈硬化症、慢性動脈閉塞性、下肢静脈瘤

これらの疾患がある方は特に注意が必要です。

夏の気候は高温多湿で、この蒸し暑さがこむら返りを引き起こすメカニズムと関連しています。暑い環境では、体内の水分が失われやすくなります。水分不足によって筋肉の疲労やけいれんが起こり、ふくらはぎの筋肉が収縮しやすくなります。さらに、暑さによって血液中のミネラルや電解質のバランスが乱れることもこむら返りを促進します。

夏のこむら返りを予防するためには、適切な水分摂取とミネラル補給が重要です。十分な水分を摂り、ミネラルをバランス良く摂ることで筋肉の疲労を軽減し、こむら返りの発生を予防することができます。

筋肉疲労とミネラル不足！ふくらはぎの筋肉とこむら返りの関係、食事で予防しよう

こむら返りは、主にふくらはぎの筋肉の疲労やけいれんによって引き起こされます。夏は活動的な季節であり、運動や長時間の立ち仕事などが増えるため、ふくらはぎの筋肉への負荷が増します。また、暑さによる水分不足や摂取する食事の内容によってミネラル不足が起こり、筋肉の疲労感が増すこともあります。

こむら返りを予防するためには、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。一般的にはビタミンEを多く含む食事（ナッツ類、ホウレンソウ、マンゴーなど）が効果的とされています。
また、筋肉疲労に効果のあるタウリンやビタミンB1を多く含んだ食材がお勧めです。

特にカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルを豊富に含む食品（バナナ、ヨーグルトなど）を摂取することで、筋肉の疲労を軽減し、こむら返りを予防できる可能性があります。一過性受容体潜在性受容体：Transient receptor poteitial(TRP) receptorを活性化する酢やシナモンやカプサイシン、しょうがなどが有効とされており、海外の文献では酢と塩分が豊富なピクルスジュースとマスタードがこむら返りに有効との報告があります。

夜間の足のつりに注意するための対策方法

夜間のこむら返りは、寝ている間の姿勢や筋肉の緊張に関係しています。寝ている間、足がつるのを防ぐためには以下の対策が役立ちます。

水分補給：特に寝る前に水分補給をお勧めします。可能であればポカリスエットやOS-1のような電解質が調整された飲料水のほうがより有効です。

• ストレッチ
  寝る前にふくらはぎや足のストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。
• 入浴・温熱
  寝る前にストレスを軽減するためのリラックス法や入浴なども効果的です。良質な睡眠とリラックスした状態で眠ることで、こむら返りのリスクを軽減できます。睡眠1時間以内前の入浴、可能ならば半身浴などで長い時間マッサージをしながらの入浴が効果的です。
• 睡眠姿勢
  寝る姿勢に注意することも重要です。背中を支える適切な枕を使用し、寝るときには片側を向いた姿勢を取ると良いでしょう。枕の高さや寝姿勢の選択は個人によって異なるので、自分に合った姿勢を見つけることが大切です。
• レッグウォーマー
  ふくらはぎが冷えないように締めすぎない程度のレッグウォーマーを試してみてください。

妊娠中の足がつる原因と予防策

妊娠中の女性はこむら返りの発生リスクが高まります。妊娠によってホルモンバランスが変化し、血行が悪化したり足のむくみが起こったりすることが原因です。妊娠中のこむら返りを予防するためには、以下の対策が有効です。

まず、定期的な適度な運動やストレッチを行い、筋肉の柔軟性を保ちましょう。また、妊娠中に必要なミネラルや栄養素を摂取することも重要です。カリウムやマグネシウムを含む食品をバランスよく摂ることで、筋肉の緊張を緩和し、こむら返りを予防できます。さらに、足を心地よく支える靴や、足のむくみを軽減するための足のマッサージも役立ちます。妊婦の方は、医師や助産師と相談しながら適切な対策を取ることが重要です。

当院でのこむら返り治療

上記のような生活指導を行ないます。

リハビリテーションでは下肢のストレッチ方法、筋力アップのための運動について指導させていただきます。

足を心地よく支える靴や、足のむくみを軽減するための足のマッサージも役立ちます。靴や装具の指導をさせていただいたり、当院ではメドマーという下肢のマッサージ器具やウォーターベッドなどマッサージ＋リラクゼーション機器を取り揃えています。
興味がおありの方は一度お試しください。

薬物治療としては最もよく処方されているのは芍薬甘草湯かと思われます。継続的な投与によってこむら返りの予防効果があります。しかし長期処方には浮腫、血圧上昇、低カリウム血症に注意が必要です。発作時の鎮痛目的で非ステロイド性消炎鎮痛剤、湿布薬、筋弛緩薬を処方することがあります。

まとめ

これらの対策を実践することで、夏の足がつるこむら返りを予防することができます。ただし、症状が頻繁に起こる場合や重度の痛みがある場合には、相談することをおすすめします。

また、自己判断ではなく専門医のアドバイスを受けながら、個人にあった対策を行うことが重要です。

当院では、整形外科・リハビリテーション科の専門医がサポートし、こむら返りの症状緩和や予防のための適切なアドバイスや治療を提供しています。

参考文献

Kevin C MillerらJ Athl Train. 2022 Jan 1;57(1):5-15.　An Evidence-Based Review of the Pathophysiology, Treatment, and Prevention of Exercise-Associated Muscle Cramps
Gaia GiuriatoらJ Electromyogr Kinesiol. 2018 Aug;41:89-95.Muscle cramps: A comparison of the two-leading hypothesis

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