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COLUMNコラム

2026.09.01

更年期から始める「骨活・筋活」―骨折ドミノを防ぎ、いつまでも自分の足で歩くために―

はじめに

更年期を迎える40代後半から50代の女性では、ほてりや発汗、疲れやすさなどの変化だけでなく、骨や筋肉にも大きな変化が起こり始めます。
特に注意したいのが、女性ホルモンの減少による「骨密度の低下」と、加齢に伴う「筋肉量の減少」です。骨が弱くなり、さらに筋力も低下すると転倒しやすくなり、将来的な骨折につながる可能性があります。

更年期は、これから先も自分の足で元気に歩き続けるために、「骨活」と「筋活」を始める大切なタイミングです。

更年期になると、なぜ骨が弱くなるのでしょうか?

女性の骨の健康には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが深く関係しています。

骨は一度作られたらそのままではなく、常に「古い骨を壊す」「新しい骨を作る」という新陳代謝を繰り返しています。エストロゲンには骨が必要以上に壊れるのを抑える働きがありますが、閉経前後になると分泌量が急激に低下します。その結果、骨を壊す働きが強くなり、骨密度が低下しやすくなります。

骨粗しょう症で注意したいのは、骨密度が低下してもほとんど自覚症状がないことです。

「骨は強い方だから」「痛くないから大丈夫」と思っている間に、少しずつ骨が弱くなっていることがあります。

更年期以降に気をつけたい「骨折ドミノ」

骨粗しょう症で本当に防ぎたいのは、「骨密度が低い」という数字そのものではなく、骨折することです。
そして、一度骨折すると、その後に別の骨折を起こしやすくなることがあります。これを「骨折ドミノ」と呼びます。

例えば、

手首の骨折

脊椎の圧迫骨折

さらに別の脊椎骨折

大腿骨近位部骨折

というように、骨折が次の骨折へとつながっていくことがあります。

また、骨折すると痛みなどによって活動量が減り、骨折 → 活動量低下 → 筋力低下 → 転倒しやすくなる → 再骨折という悪循環に陥ることもあります。
そのため、骨粗しょう症対策では、最初の骨折を防ぐこと、そして一度骨折した方では次の骨折を防ぐことがとても重要です。

特に防ぎたい「脊椎圧迫骨折」と「大腿骨近位部骨折」

骨粗しょう症による骨折の中でも、特に注意したいのが、脊椎圧迫骨折(骨粗しょう症性椎体骨折)、大腿骨近位部骨折です。

これらの骨折は、単に痛みが生じるだけではありません。
歩行能力や日常生活動作が低下し、介護が必要になる原因となるだけでなく、その後の生命予後にも関係する重要な骨折です。

脊椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折・腰椎圧迫骨折)

骨粗しょう症によって背骨が弱くなると、転倒など明らかな原因がなくても、背骨がつぶれるように骨折することがあります。特に注意すべきは脊椎圧迫骨折が見つかった人の3分の1は何の症状もない「いつのまにか骨折」であるということです。

「以前より身長が縮んだ」
「背中が丸くなってきた」
「最近、腰や背中が痛い」

という場合には、知らないうちに脊椎圧迫骨折を起こしている可能性もあります。

脊椎骨折を繰り返すと、姿勢が前かがみになったり、心臓・肺・消化管の居場所がなくなるので、食欲・体力・心肺機能・歩行能力が低下することで、生活の質が大きく低下することがあります。

大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折)

大腿骨近位部骨折は、いわゆる「脚の付け根の骨折」です。高齢になると、室内でのちょっとした転倒でも起こることがあります。大きく分けると関節内骨折である大腿骨頚部骨折と関節外骨折である大腿骨転子部骨折があり、予後や手術方法が異なります。

多くの場合、手術や入院が必要となり、それまで一人で歩いていた方でも、骨折後に杖や歩行器が必要になったり、介護が必要になったりすることがあります。

さらに大腿骨近位部骨折は、骨折後の全身状態や生命予後にも大きく影響します。年齢や骨折型によっても異なりますが、大腿骨近位部骨折後の5年生存率は66.7%(2023年報告)、51.5%(2006年報告)と報告されており、脊椎椎体骨折は70.2%(2026年報告)とされています。がんと診断された方の5年生存率が60.3%と報告されていることと比較しても、特に大腿骨近位部骨折は癌と同等またはそれ以上の致死率であると考えられます。

だからこそ、骨粗しょう症治療では、「脊椎骨折や大腿骨近位部骨折特に大腿骨近位部骨折を起こさないこと」が非常に重要な目標になります。

骨折する前に「DXA」で骨密度をチェック

骨粗しょう症は、骨折するまで気付かないことが少なくありません。そこで重要になるのが、DXA(デキサ)法による骨密度検査です。

前述の骨折を起こさないようにすることが目的なのでDXAでは、主に「腰椎」「大腿骨近位部」の骨密度を測定します。骨密度が低下すればするほど骨強度が低下して骨折リスクが高まります。
検査は痛みがなく、極めて被ばく量が少なく比較的短時間で行うことができます。DXAによって現在の骨密度を数値として確認することで、

などを客観的に評価することができます。大切なのは、「骨折してから調べる」のではなく、「骨折する前に調べる」ことです。

残念ながら骨粗しょう症治療効果判定は、腰椎と大腿骨近位の骨密度でしか評価が困難ですし、現在使用されている骨粗しょう症治療薬は、腰椎・大腿骨どちらかまたは両方の骨密度が減少しているかによって治療薬剤を決定します。特に閉経後の女性では、早い段階から骨の状態を知っておくことをおすすめします。

カルシウムやビタミンDだけで骨折は防げる?

「牛乳を毎日飲んでいるから骨は大丈夫」
「カルシウムのサプリメントを飲めば骨折は防げますか?」

と患者さんから意見・質問されることがあります。
カルシウムやビタミンDは、骨の健康にとても重要です。カルシウムは骨の材料となり、ビタミンDは腸からカルシウムを吸収する、骨の石灰化ために必須です。ビタミンDが利用されるためには腎臓で活性化される必要があり、そのためには紫外線への暴露が必要です。人工透析を受けている方など腎機能が低下している方は、ビタミンDを摂取しても活性化が十分行われないので、腎機能が不良の方は活性型ビタミンDの服用が必要です。

しかし、カルシウムやビタミンDを摂取するだけで、骨粗しょう症によって上昇した骨折リスクを低下させることは困難であることは多くの論文で報告されています。

食事やサプリメントによるビタミンDとカルシウムの充足は骨粗しょう症対策の大切な「土台」ですが、すでに骨密度が低下して骨折リスクが高くなっている方では、食事だけでは十分でないと考えられています。その場合には、骨密度や骨折歴、年齢などを考慮し、必要に応じて骨粗しょう症治療薬を使用します。

現在では、

など、さまざまな治療法があります。

「昔から魚をたくさん食べてきたから」「サプリメントを飲んでいるから大丈夫」と考えるのではなく、まず自分の骨密度を知ることが大切です。

骨折予防には「骨」だけでなく「筋肉」も重要です

骨折を防ぐには、骨を丈夫にするだけでは十分ではありません。なぜなら、高齢者の骨折の多くには転倒が関係しているからです。筋肉量や筋力が低下すると、

といった変化が起こります。
つまり、骨を守る「骨活」+転ばない体を作る「筋活」を同時に行うことが大切です。骨量や筋肉量は老化とともに減少するという事実には変えられません。

いかに元気な時から骨量と筋力を上げておく「貯骨」と「貯筋」、またいかにそれを維持するかが重要です。

InBodyで筋肉量を「見える化」

体重だけを測っていても、体の中で筋肉が増えているのか、脂肪が増えているのかまでは分かりません。そこで役立つのが、体成分分析装置InBodyです。
InBodyでは、体脂肪率などに加えて、「右腕」「左腕」「体幹」「右脚」「左脚」といった部位別の筋肉量を評価することができます。

例えば、「下半身の筋肉が十分あるか」「右脚と左脚で筋肉量に差がないか」「運動やリハビリで筋肉量が変化しているか」などを数値として確認できます。

特に膝や股関節の痛みがある方では、知らないうちに痛い側の脚をかばい、左右の筋肉量に差が出ていることがあります。筋肉量を実際に「見える化」することは、運動やリハビリテーションの目標を考えるうえでも役立ちます。

DXAで骨を評価し、InBodyで筋肉を評価する。この2つを組み合わせることで、骨折と転倒の両方を予防する「骨活・筋活」につなげることができます。

食事では「カルシウムだけ」でなく、たんぱく質も意識しましょう

骨と筋肉を守るためには、毎日の食事も重要です。カルシウムやビタミンDに加えて、筋肉の材料となるたんぱく質もしっかり摂りましょう。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく取り入れることが大切です。

更年期以降は体重増加を気にして、食事を極端に減らしてしまう方もいます。しかし、過度なダイエットによって筋肉まで減ってしまうと、将来的には転倒や骨折のリスクを高める可能性があります。

目標は単に「体重を減らすこと」ではありません。骨と筋肉を保ちながら、健康的な体を維持することが大切です。

運動で「転ばない体」を作りましょう

骨と筋肉を維持するためには、適度な運動も欠かせません。筋力アップには、ウォーキングに加えて、

など、下半身の筋肉に刺激を与える運動を組み合わせるとよいでしょう。

もっと運動できる人はエルゴメーター、水中歩行、ピラティスなどを併用して運動するのがよいでしょう。ただし、膝や腰に痛みがある方や、すでに脊椎圧迫骨折などがある方では、適切な運動内容が異なります。痛みを我慢して無理に運動するのではなく、整形外科で状態を確認し、自分に合った運動を行うことが大切です。

骨密度を上げるための運動は

骨を強くするための運動と筋力をつけることは必ずしも一致しません。骨を強くするためには重力に逆らった運動(抗重力負荷)をすることが重要です。
一方でアーチスティックスイミング(旧称シンクロナイズドスイミング)や競泳選手、自転車競技の選手は筋骨隆々の方が多いですが、水中や自転車上での競技時間が長ければ長い選手ほど骨粗しょう症リスクが高いことが知られています。
自転車(エルゴメーターを含める)や水泳は筋力や心肺機能を改善する運動としては非常にいいのですが、骨密度を上げるための運動としては適切ではありません。

骨を強くするためには地面に足をついてバスケットボールやバレーボールのようなジャンプ競技をはじめ、ダッシュする競技が理想ですが、経験者でなければハードルが高いです。なので運動経験がなくても手軽にできるのは、

などの運動が手軽です。「かかと落とし」もいい運動ではありますが、骨への刺激という面では上記運動と比較すると強度が劣ります。

こんな方は一度、骨密度・筋肉量を確認してみましょう

次のような方は、一度ご自身の骨や筋肉の状態を確認することをおすすめします。

症状がなくても、骨や筋肉の変化が始まっていることがあります。

「骨活・筋活」の目的は、いつまでも自分の足で歩くこと

骨粗しょう症治療の目的は、単に骨密度の数字を上げることではありません。

脊椎圧迫骨折を防ぐこと。大腿骨近位部骨折を防ぐこと。転倒を防ぐこと。
そして、介護のお世話にならないで、いつまでも自分の足で歩き続けること。

それが最も大切な目的です。

旅行を楽しむ。家族と買い物に出かける。友人と食事をする。趣味を続ける。
そんな何気ない日常を、10年後、20年後も続けるために、今からできることがあります。

DXAで骨密度を知る。
InBodyで筋肉量を知る。
必要な栄養を摂る。
適切に運動する。
必要であれば早期に骨粗しょう症治療を始める。

更年期は、決して「老化が始まる時期」というだけではありません。これから先の健康を守るために、自分の体を見直す絶好のタイミングです。

骨を守ることは、歩ける未来を守ること。筋肉を守ることは、自分らしい生活を守ること。

当院では最新の腰椎・大腿骨近位を測定するDXAと筋力を評価するinbody、必要な筋トレを指導するリハビリテーションを充実させています。更年期を迎えた今こそ、将来の骨折予防に「骨活・筋活」を始めてみませんか。

この記事を書いた人

中谷 宏幸
整形外科医、リウマチ医

整形外科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医。大阪大学医学部整形外科教室に入局リウマチグループに所属して、リウマチ医、下肢人工関節、足の外科医として基幹病院での勤務医を経て2022年なごみ整形外科リウマチクリニックを開業

専門分野

リウマチ性疾患の薬物治療、関節疾患(特に下肢関節)ペインクリニック(エコーガイド下ブロック・ハイドロリリース)、骨粗しょう症治療、足・膝・股関節、小児整形、リハビリテーション

受賞歴

日本リウマチ学会奨励賞
ISTU(国際超音波治療学会)Young investigator`s awardなど

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