概要
変形性膝関節症とは軟骨の変性により関節の隙間(関節裂隙)が徐々に狭くなってゆきそれとともに骨棘形成や半月板、靭帯の変性が生じる疾患です。
中年以降の女性に多く、年齢とともに罹患率は上昇します。肥満や遺伝的素因、外傷や感染などがきっかけとなり、はじめは立ち上がり時の痛みから徐々に可動域制限や歩行障害が生じてきます。
時に水腫の貯留(水がたまる)を伴います。
治療としては急性増悪時には安静が必要で、鎮痛剤、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射、足底版が有効なことがあります。
変形の進行予防には筋力トレーニングが有効です。
近年では再生医療を用いた細胞治療が行なわれています。進行期若年例では骨切り術、変形の進行例では人工膝関節置換術などの手術が一般的に行なわれます。
膝半月板損傷とは
半月板は膝関節にある組織で内側外側の関節包に付着しており、膝関節の安定化に寄与してます。
半月板は軟骨組織でできており、自然修復が困難です。
外傷性半月板断裂では受傷直後の強い痛みや腫脹、ロッキング症状と言われる膝関節が伸びなかったり曲がらなかったりして日常生活に大きく影響を与えてしまうことがあります。また、加齢とともに変形性関節症の進展とともに進行する変性断裂が原因となる場合があります。
変性断裂の場合は明らかな外傷がなく、ロッキング症状なども起こりにくい特徴があります。
膝半月板損傷の原因
スポーツで膝をねじるなどの外傷による断裂と、加齢に伴う変性で起こる断裂があります。
スポーツの場合には、膝の前十字靭帯等の断裂を伴う場合もあります。また、アジア系人種に多いといわれる外側円板状半月板の断裂は、小学生などでも膝の痛みの原因となり得ます。
膝半月板損傷の治療
治療としては安静、鎮痛剤処方、関節内注射などが有効です。効果不十分な場合は手術療法の適応になります。
手術には可能な限り修復術が望まれますが、断裂の程度や形態や部位によっては修復が困難な場合、切除術を行ないます。
近年では同種間葉系細胞を用いた再生医療の試みも行なわれています。
前・後十字靭帯、内・外側側副靱帯とは
スポーツ外傷や交通事故などで大きな力が膝に加わった時に、その外力の方向に応じて種々の靭帯損傷を生じます。膝関節には4つの大きな靭帯があり前後方向への制動性は前十字靭帯・後十字靭帯、内外反方向への制動性は内側側副靭帯・外側側副靭帯が担っています。
一般に外反強制により内側側副靭帯が、内反強制により外側側副靭帯が損傷し、また脛骨上端の前内方に向かう外力で前十字靭帯が、後方への外力で後十字靭帯が損傷します。
最も頻度が高いのは内側側副靭帯損傷で、外側側副靭帯を単独で損傷することは稀です。
非常に強大な外力を受けると複数の靭帯に損傷が及ぶこともあります。
受傷すると急性期には膝の痛みと可動域制限がみられます。しばらくして腫れ(関節内血腫)が起こり、急性期を過ぎると痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきますが、損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。
不安定感があるままに放置しておくと新たに半月(板)損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現します。
診断には徒手あるいは測定機械による健側との靭帯安定性を比較することで可能ですが、半月板などその他の組織の状態把握のためにもMRI検査が非常に有用です。
前・後十字靭帯、内・外側側副靱帯の治療
治療方法は損傷した靭帯の部位や年齢、スポーツアクアクティビティーにより異なります。内側側副靭帯損傷では基本的に装具を装着したうえでの保存療法を行ないますが、前十字靭帯損傷は手術適応になることが多いです。
十字靭帯の治療は自家組織(ハムストリング腱や膝蓋腱など)を用いて再建術が一般的です。