前項でサルコペニアの診断と治療についてお話ししました。加齢とともに筋肉量は減少し、サルコペニアを発症するリスクが高まります。さらに変形性膝関節症など運動器疾患を併発することによりそのリスクは高まります。

サルコペニアは徐々に歩行能力の低下を生じるのみならず、日常生活動作が困難になり、健康寿命の短縮や介護度の上昇が予想されるだけでなく、様々な疾患リスクが高まり、余命にも影響を与えます。

筋力量の低下を感じた場合は早期からサルコペニアの診断を受けて、進行の予防をすることが重要です。

今回のコラムでは当院理学療法士の田中翔子がサルコペニア予防のための自宅で簡単に行なえるエクササイズをご紹介します。

• 頻度：週2-3回（同じ筋群の運動を行う場合は、少なくとも48時間空ける）
• トレーニング量：2～3セット
• 1セットにつき7～9回の繰り返し
• 強度：最大強度の50％程度を目標
• 1回の手技に6秒かける（息を吐きながら3秒かけて持ち上げ，息を吸いながら3秒かけて下ろす）
• セット間の休憩：2分間を目安に

• 仰向きに寝て両膝を立て、お尻に力を入れて持ち上げます。5～10秒保持しておろします。就寝前にベッドで行なえる運動です。
• 1セット15~20回　2～3セット行いましょう

• 肩幅程度に足を広げて前の椅子にかるくもたれかかりながら立ち、足全体を後ろに動かしましょう。股関節が固い人は無理のない範囲で。
• 1セット15~20回　2～3セット行いましょう

• 横向きに寝て膝を曲げ、手で体を支えます。上側の下肢を膝を伸ばしたまま持ち上げます。5～10秒保持して下ろします。
• 1セット　10回～　2セット前後を目安に行いましょう

• 立った状態で椅子や机に反対の手で支えながら足全体を外向き方向に動かしましょう（※つま先が外側を向かないように）
• 1セット15-20回　2～3セットを目安に行いましょう

• 椅子に座って片方の膝をゆっくりまっすぐ伸ばします。伸ばし切ったところで3秒間止め、ゆっくりと下ろします。余裕があれば重錘バンド（1㎏）を足首に巻くとよいでしょう。
• 1セット　10回～　2～3セットを目安に行いましょう

• 椅子に座って膝を胸に近づけるように持ち上げます。負荷が物足りない方は重錘バンド（1-3㎏）を足関節に着けて行ないましょう
• 1セット15~20回　2～3セットを目安に行いましょう

エクササイズ⑦：カーフレイズ

• 肩幅くらいに足を開いて立ち、テーブルなどにつかまってゆっくりとかかとを持ち上げてつま先立ちになり、2～3秒保持してゆっくりと下ろします。踵を下ろすときは強めの衝撃を与えるとよりよいでしょう（踵落とし運動）
• 1セット15~20回　2～3セット行いましょう

• 椅子に座った状態から下肢の力だけでゆっくり立ちすわりを行ないます。なるべく勢いに任せて立ち上がるのではなく、ゆっくり行ないましょう。立ち上がりが不安定な人は机などに手を添えて行ないましょう。特に座るときは椅子の位置を確認して転倒に注意しましょう。
• 1セット15~20回、2セットを目安に行いましょう

• 仰向きに寝て両膝を立て、おへそを見るように頭を持ち上げます。おへそを見るところまで上げるだけでそれ以上は過度に負担がかかって痛みの原因になる可能性があるので控えましょう
• 1セット　10回～　2～3セット行いましょう

エクササイズ⑩

主な対象筋肉：体全体

• 四つ這いで右手・左足を同時に挙げて5秒保持し、元に戻します。反対（左手・右足の挙上）も行いましょう。同時に出来ない人は手だけ、足だけで行いましょう。
• 1セット　10回～　2セット前後を目安に行いましょう

日本理学療法士協会：理学療法ハンドブック. https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/tools/handbook/（2025年3月20日引用）

最後に

強化する筋肉を意識して1動作丁寧にゆっくり行ないましょう。これらの運動は歩行能力が低下したサルコペニアの診断がついた方に対するエクササイズです。ランニングやウォーキング、エアロビクスなどの強度が強い運動ができる方はもっと強度の高い運動を優先してください。これらの運動の種類や強度、頻度はあくまでも目安です。個人の体力に応じてアレンジして運動してゆきましょう。3日坊主にならないように長く続けることが重要ですので、無理のない範囲で行ないましょう。これらの運動療法の指導を希望の方は当院スタッフまでご相談ください。

いつまでも元気に！サルコペニアとは何か、診断と予防までやさしく解説